大判例

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東京高等裁判所 昭和34年(う)1381号 判決

被告人 榎本辰雄

〔抄 録〕

弁護人の控訴趣意第二点について。

論旨は、売春を周旋する目的で人を売春の相手方となるように勧誘する罪の成立するためには、売春の主体となる者(売春婦)の存在を主張立証すべきであり且つ判決においてもその点の判断を明示すべきものであつて、それらが欠けている場合には、罪刑法定主義従つて憲法第三十一条に違反する筋合であるといわなければならないところ、本件においては、売春の主体の存在について主張立証もされず、原判決においてもその点の判断を欠いているから、原判決には理由不備の違法があり破棄を免れないと主張するのである。

よつて按ずるに、被告人は売春を周旋する目的でその前提となる「人を売春の相手方となるように勧誘する行為」をなしたものであることについては原判決に事実の誤認が存しないことは既に前段説示により明らかであるところ、原判決が証拠として挙示した被告人の検察官、司法警察員に対する各供述調書の記載によると、論旨にいわゆる売春の主体なるものが現実に存在しており、客の求めにより直ちに提供し得る関係にあつたということが明瞭であるといわなければならないから、その点に関する主張、立証はなされているものというべきであり、かゝる証拠が存在している以上判決文においてその判断を示すことは本件売春防止法違反(第六条第二項第一号違反)の犯罪事実の判示としては要求されておらず又はその必要もないといわなければならないのであるから、これを要するに原判決には何ら理由不備の違法はなく、ひいて憲法第三十一条違反とみなすべき違法は存在しないといわなければならない。論旨は理由がない。

(三宅 井波 司波)

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